院長・スタッフ紹介

歯科医師: 長濱 文雄 ながはま ふみお

元 日本大学 松戸歯学部再生歯科治療学講座 教授

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私は、根治(歯の根の治療)が好きなのですよ。
「治った!」と患者さんに喜ばれるところが嬉しいのです。

先生は「歯の根の治療」を専門にやっていらしたとの事ですが・・。

そうですね。
歯の根の治療は、1回目の治療でうまくいくと、9割くらい治るという報告があります。
2回目の治療(再治療)になると、6割くらいに下がります。

1回目と2回目は、同じ治療ができる訳ではないのです。
回数を重ねれば重ねるほど、治りが悪くなります。

「治らないものに対して、どういう治療をするか?」というと、
第一は、根の先を切る手術、いわゆる「根尖切除術(こんせんせつじょじゅつ)」をします。
その手術ができる範囲は、解剖学的に決められています。
歯の根を切る「タービンバー」という機械が届く範囲までです。
具体的には、下のアゴだと真ん中の歯から、6番(手前から3番目の臼歯)くらいまで、上顎(じょうがく:上アゴ)も6番目くらいなら何とかできます。

「歯の根の先を切る」なんて、そういう治療があるのですね。

ただ、奥の方の歯は届かないので、無理なのです。
出来ない場合は「意図的再植(いとてきさいしょく)」をします。
例えば、一番奥の歯を一回抜いて、口の外で根の治療をします。
具体的には、悪いところを取って、根の先の方に病気があれば掻爬(そうは:口腔内の悪い組織を掻き出すこと)、悪いところをとってキレイにして、それを元に戻して固定をします。
そうすると、うまくいけば長く使えます。

取って戻しても、くっつくのですね。

くっつくのですよ。
人間の力って、すごく強いのですよ。
ちょっとやそっとのことで、ダメにならないですからね。
歯と歯茎の間にある歯根膜(しこんまく)が、歯と骨をくっつけているクッションの役割をしますが、歯根膜がきれいに残ればほとんどの場合は成功しますね。

「歯根膜が残っている」のが条件になってきますね。

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そういうことですね。
歯を失くしてしまった方にとっての治療法は、インプラントもあります。
インプラントは、噛む力がかかった時に骨に「コツンコツン」と響くわけですね。
一方、自分の歯には「歯根膜」という組織があります。

「再植(さいしょく)」は、歯根膜が残っていますから、そのことによって噛み応えがある、噛んでもクッションの役割がある歯となり得るのです。
歯根膜を介して、「この食べ物はこういう感じだ」というように脳にいろいろな伝達もいきます。
そういった意味では、いいと思います。

「インプラントに代わるもの」になり得るのですか?

ただ、限られたところにしか植えられません。
例えば、上顎4番目の歯(犬歯の隣の臼歯)には、根が2つあるので、根が1つの歯の場所には入れられません。

「親知らず」を「歯のバンク」に預けて、移植可能な場所に再植(さいしょく)する治療を臨床で既にやり始めているという話を聞いたのですが。

はい、そうですね。

すばらしいですね!

(以前勤務しいていた日本大学松戸歯学部付属病院では)インプラント科から「この歯をこっちに移植してくれないか?」ということもありました。
インプラントの先生も、移植可能な歯があって、植えることができるんだったら「それもよし」と考えてくださっているんですね。
でもそのためには、サイズが合うか?等、いろいろな事を調べなくてはいけません。
そういった意味では、100%出来る訳ではありませんが「移植は可能だったらやりましょう」ということです。

歯を失った人には朗報ですね。

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そうですね。
診査して「このケースは安全」ということがわかれば出来ます。
リスクのことを考えなくてはいけないので、にじいろ歯科で出来ない場合は、日本大学松戸歯学部に依頼することもできます。
できるだけ歯を残す事を考えて・・もちろん割れていたりする場合は別ですが・・健康な歯質があれば、根尖切除術(こんせんせつじょじゅつ)、あるいは再植(さいしょく:抜いて治療して元に戻す)もします。

移植は違うんですね。

そうですね。
移植は、抜いて、違うところの部位に移植する。
これは自費でやることもありますが、ほとんど保険でやるのですね。

保険で?!

その代わり限られた場所、大臼歯部だけです。
その部分だけは、移植可能です。

ただ、非常に難しい技術です。
抜歯をして、同時にその日に移植しますからね。
そうしないと、保険適応にはなりません。

「歯を預けるバンク」があるということですが、具体的にはどこで預けられるんですか?

この辺では、日本大学松戸歯学部付属病院の再生歯科しかありません。
松戸歯学部付属病院に設置してある凍結保存の冷凍庫があり、そこに何本も歯が入れてあります。
これは、自費ですが、新聞に載ったので必要な方が来たりしていますね。

預けられるんですか?

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はい、矯正の患者さんに預ける方が多いですね、抜いた歯がもったいないですからね。
これがノーマルになればインプラントよりいいと思います。
移植するところの歯の大きさは、CTがあれば調べられます。

インプラントの治療は高額ですが、移植はインプラント以下の金額で出来ます。
ただ、移植床(しょう:移植する場所)の大きさに合わせて削ったり、その辺の技術が難しい。
歯自体の根っこの張り具合、根っこが単根(たんこん)の歯は入れやすいのですが、中には根が曲がっていたり、複雑な形態をしているものもあります。
そうするとちょっと難しいです。

簡単におっしゃっていますが、すごく難しい事なのですよね?

そうですね。
ま、難しいですよ。
でも、そこさえ合って移植する歯に歯根膜がきちんと残っていれば、人間の再生の能力はすごい強いですから、かなりの確立でくっつきます。

にじいろ歯科で相談は出来ますか?

もしそういうご希望があれば、できる範囲で、移植でも再植でも根尖切除術(こんせんせつじょじゅつ)でも、外科的なことはやろうと思っています。

1番ニーズがあるのは、根治(こんち:歯の根の治療)になると思いますが。

私はもともと「歯内療法学」、いわゆる「歯の根の治療」をするところに20年いました。
根本的には「根の治療」が専門です。
今は、顕微鏡がありますからね。
それまでは顕微鏡なしで自分の感覚でやっていましたけど、顕微鏡を与えていただいてからはガラリと変わりましたね。

顕微鏡、にじいろ歯科にもありますよね。

そうです、顕微鏡で根の状況を確認します。
顕微鏡で拡大してみると「ああ、こんな世界があったのか」と私もすごく驚いたのですね。それを見て治療すると、精度がかなり上がります。
当院に来てくださる患者様に還元しようと思っています。

松戸歯学部レベルの治療が、にじいろ歯科で受けられる?

そういうことですね。

根の治療というのは、経験した人はわかりますが、一回失敗すると失敗を繰り返す、でもうまくいけば、レントゲンで撮ると奥まで白くビッシリ詰まっていて長持ちします。結構差が激しいというか・・。

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そうですね。
今までの私の経験で、根の治療をして、きれいに無菌的にして、なおかつ根管充填(こんかんじゅうてん)をしたら何十年も持つと思うんですね。
ところが、時間が掛かるし、目に見えないし、唾液も入りますからね、適当にやると予後が悪いのです。
ラバーダム(右画像参照)しても、唾液は入るのです。

細菌の数を減らせば減らすほど、よくなりますからね。
根の先の方まで拡大して、きちんと消毒すれば、病気は出てきません。
ラバーダムをしないで唾液が入ってそのまま治療を続けるという事は、細菌を入れているようなものですからね。
昔は、細菌が根管の根の中にだけ留まっているというのが定説でした。
でも、今はバイオフィルム・・例えるなら、細菌が鎧(よろい)を被って住んでいる・・が、抗生物質が来てもシャットアウトできる所に住んでいるという事がわかっています。
しかも自分で毒素を出して、どんどん病気を大きくしていく。

ですから、その場合は根の先を切る手術と同時に、根尖の病気の部分を搔爬する手術になります。

根の先を切るのですね。

はい。
先に根の治療をしたり根尖、切ります。

根の先を切ったら、切りっぱなしではなくてガッタパーチャ(根管充填材)というのがありますので、神経の管の中をそれで埋めます。
ガッタパーチャは熱に弱いので、根の先を切ったところに、裏から穴を開けて詰め物をして(逆根管充填)、歯の中から刺激となるような物質が出てこないようにします。

・・それって完璧に近いですね。

そうですね。
それが今のところやられている最新の治療ですね。

最新の治療なのですね。

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やはり、顕微鏡が出てきてから良くなりました。
それまでは、切って切りっぱなしという事が多かったんです。
でも、ガッタパーチャ(根管充填材)は熱に弱く、切断する時にはタービンバー(歯を削るときの機械)という高速回転の機械で切りますから多少の隙間ができます。
肉眼では見えなかったのです。
「そのまま詰めてそれでおしまい」でしたけれど、今は顕微鏡がありますから、その隙間も見えますので、根の先はやはり神経の管を逆から埋めて塞ぎます。
そうしたら、ほとんど完璧です。

根治(こんち:根管治療、歯の根の治療)は専門医にやってもらうのが一番なのですね。僕も苦労しました。痛くて眠れなかったのです。

そうですか、大変でしたね。
私が患者の立場だったら、できれば根の治療だけは専門医、優れた技術の人にやっていただきたいです。
その方が安心です。しかし、今の保険制度ではかなり難しいとも思います。
二回目以降、治る率が下がるのですから、初回でしっかりやることが一番です。
プラス、無菌的にするには、細菌の多くを死滅させるようなキチンとした薬剤を使わないとだめです。

根の治療に関しては、1時間から1時間半の時間を取ります。
歯を薬液に漬けておく時間もありますし、拡大もしますし、曲がっている根管に対しては、それにあった機械を使わないといけないですしね。
普通の機械だと、フレキシブルでないため、硬いところを真っ直ぐ進めてしまって、人工的な穴を作っちゃう、そういう事は案外多いのです。

刺しちゃう訳ですね、痛いですよね。

はい、痛いです。
出血もします。
ですから、それにはそれに合う機械を使ってやらなくてはいけません。

「根治の大切さ」がしっかり伝わるといいですね。

私としては、一回目の抜髄(ばつずい:神経を抜くこと)、根管充填(神経を抜いたところに詰め物をすること)の流れがキチっとできれば、再発してもそれほど大きな病気にはならないと思います。
その一回目の治療でうまくいかないと、知らない間に大きな病気が根の先に出来て、急に腫れて痛む事はあります。

経験ありますが、痛くて眠れないのですよ。

あの痛みですね。
患者さんに「何とかしてくれ」とよく言われますが、その場合は何ともならないのです。
何とかするには、詰まっているものをきれいに全部取らなくてはならないのです。骨の中にたまっている圧を抜かなくてはなりません。
それを取るには、1時間も2時間も掛かります。
それをできるかどうか?ということです。

そういえば、自分の治療の際、口を開けっ放しで、ラバーダムつけて、すごく疲れた事を思い出しました。
患者さん側も覚悟を持って、時間をしっかり掛けないとダメだということですね?

患者さんの中には、来てすぐ治って「ハイ終わり」というのが嬉しい人もいると思います。
ただ、私の治療に関しては、1時間から1時間半掛かりますからね。もちろん途中で休めます。

もともと歯の根の治療は、そんな短い時間で出来る治療ではないのですね?

もちろんもちろん。
治療した根の中には、先ほどお話した「ガッタパーチャ」という物が詰まっているのですけど、それを取るにはすごい労力が掛かります。
簡単に取れるものではないのです。
取る時に根の先に「ガッタパーチャ」が出て散らばると、そこに細菌がへばりつきます。
そうすると、そこで細菌がどんどん繁殖して、バイオフィルムを作って、そこに残ります。
一括して「スポッ」とガッタパーチャが取れることもありますが、私はほとんどの場合、根の先端部分は「超音波用エンドファイル」という機械で、少しずつガッタパーチャ溶かしながら取っていきます。

それが一回や二回で終わることは、まずないですね。
きれいに取るには、時間をかけて取って、悪いところを顕微鏡で拡大して見ながら治療するという事になりますから、一本の歯に対して最低でも3回くらいはかかるでしょう。
「取ってまたすぐに戻す」ということは、出来ないのです。

うまくいって、3回くらいで治療は終われます。
根管内に細菌が残っていますから、それを消毒しなくてはいけません。
今は、水酸化カルシウム系の消毒薬を使っています。

消毒しないままだと、細菌もそのまま生きていますから、それをそのまま押し込むということになります。
なので、根っこの中の消毒も必要です。
歯の根の一番表面の「セメント質」の下の「象牙質」を拡大すると、細かいミクロの世界ですが象牙細管(ぞうげさいかん)という管がたくさんあります。
その中に、細菌が押し込まれているのです。

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うまく根充(こんじゅう:根っこに詰め物をすること)が出来ていれば、フタしていいのですが、うまくできていない根充、例えば唾液の入った根充だと、そこから細菌が繁殖して、根管内、根の先から外まで細菌が増殖してきます。

ですので、根管内をきれいにして水酸化カルシウムで消毒して、しかもきちんとフタをすれば病気が治ってきます。

面白い実験があります。
ラットの歯の神経を削り出したところに、無菌的な食事を与えていると、無菌状態であればそこにフタができるのです。
神経も死なないで残っています。

かたや、無菌状態じゃなくて、普通に飼育しているラットの神経にちょっと穴を開けて放っておくと神経は死んでしまう、壊死して腐ってしまうのです。

それには、細菌が関与しています。
無菌的にしていれば、黙っていてもフタができて神経の作用、歯髄の作用としてそのまま残ります。
それがすべてのところに当てはまる、根尖(こんせん:根の先)も、もちろんそうでしょう。

細菌さえいなければ、刺激がないのですから人間の力で再生するわけです。
う蝕(うしょく:虫歯のこと)もそうですが、ほぼ99%は細菌の仕業ですね。
口腔内はそういう訳にはいきませんが、細菌さえコントロールできれば多くは治ってしまうのです。

歯の根の治療については、患者さんも治療期間が長くなる覚悟が必要なのですね。

治療期間、長いですよ。
覚悟が必要です。

あと「一回目の根の治療は一番重要」ということですね。
神経を取ることになったら、しっかりとした根の治療をやってもらうことが一番大事です。

二回目の治療をすることになったとしたら、若干治りは悪くなる。

それでも治らないことがある。
細菌が、根の先にバイオフィルムを作っていた場合ですね。
まず「根の先を切る手術」も考えます。
次に、奥の歯で根の治療ができない場合は、再植(さいしょく)も考えます。
再植(さいしょく)もダメな場合は、歯を抜いて移植を考えます。
それでもダメな場合は、抜歯になり、インプラントなどにするということですね。

週1回来ても「最低2~3ヶ月」はかかりますね。

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歯の種類によって違いますけれどね。

単根(たんこん)、つまり1つしか根がない前歯の治療は
「神経を取る、消毒、取った神経の管につめ物をする、土台を立てる、被せ物をする」という手順になります。
1回目は神経を取ります。
初めて神経を取る時は、細菌は象牙細管という細かい管(くだ)にそれほど入っていません。
神経の中に留まっています。
細菌が少ないですから、悪いものを全部取り出して、消毒して、次に埋めることがでます。

2回目に状態が良ければ神経の管につめ物をします。

3~4回目に来た時は、土台を立てるか、あるいはそのまま歯がしっかりしていれば、レジンという材料の土台を入れて、それを削って被せ物をします。
短くて、計4回、1ヶ月~1ヶ月半で出来ると思います。

複根(ふくこん)だと、根の数によりますが、根の治療は2回では終わりません。
最低でも4~5回はかかるでしょう。
毎週来て、2ヶ月くらいかかりますかね。

にじいろ歯科は、患者さんのパートナーとしてしっかり治したい人と一緒にやっていきたいという院長先生の話だったのですが、根治はまさにそういうジャンルになりますね。

そうですね。
「しっかり治したい、いい治療をしたい」という事がいつも私の心の中にあります。
そういう治療がしたいのです。
こちらが一生懸命やっても、1ヶ月も2ヶ月も治療の間隔が開いたら、その間にセメントも溶けたり取れたりします。
そうすると、また細菌が入ります。
そうすると、全部最初からやり直しになり、ご自分のためにも良くないのです。
ですから、しっかり続けて来ていただきたいのです。
「時間が掛かる」という事を承知していただいた患者さんに来ていただきたいというのは、私も院長と同じ考えですね。

「そのかわりキッチリ治します!」という事ですね。

そうですね。
ちゃんとやらないと、最終的に歯が無くなりますからね。

私は、根治が好きなのですよ。
なかなか「根の治療が好きだ」という人間はいないと思います。
もともと好きで、なおかつよく見える顕微鏡で治療すると、楽しいのです。
治療するときの姿勢は、肩が凝り、背中が痛くなるので、つらいことはつらいですね。
でも、それ以上に楽しいですね。

「治った!」って患者さんが喜ばれるところが嬉しいのですね。
「治した」という自負よりは、患者さんが一言「よくなりました、ありがとうございました」と言ってくれる、それが嬉しいのです。
(根治を)依頼された先生に「こないだの患者さん、こういう風に治って喜んでいたよ」って言って頂けるだけで嬉しいですね。
そういうのを含めて「根の治療は面白い」ということです。

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