スタッフブログ

スタッフブログStaff blog

2020/07/27
医師インタビュー
摂食嚥下専門医インタビュー
摂食嚥下専門医 訪問歯科担当:島野 嵩也 しまの たかや
日本大学大学院歯学研究科
口腔健康科学分野



 胃ろうになったからといって口から食べてはいけない訳ではありません。 

その人の残された機能を使って、味を嗜んで(たしなんで)欲しいです。 

Q.最近いろいろな歯科医院で、摂食嚥下(せっしょくえんげ)の先生が増えてきていますね。

いいことだと思います!

Q.摂食嚥下の先生って、普段どんなところで診療されているのですか?

私の場合、救急車で運ばれてくる急性期の患者さんを御茶ノ水にある日本大学病院で診たり、
在宅とか施設とかの介護現場などでしょうか。

Q.そもそも、「摂食嚥下」というのは「飲み込む事」という理解でいいのですか?

いや、「飲み込むこと」という事自体ではないのです。 
例えば、目の前におせんべいがあるとするじゃないですか? 
まず見て「それは食べられる物なんだろうか?
これは、サラダせんべいなのか?固焼きのせんべいなのか?どれくらい噛んだ方がいいのか?」とか、
「一口の量はどれくらいがいいのか?」とか、、、摂食嚥下とはそこから、食べ物を見て判断するところからなのです。

Q.え?!初めて知りました!結構世間的には誤解されているかもしれませんね・・。

「モグモグゴックン」だけじゃなく、「食べ物の認識」からなんですよ。 
普段、無意識にしている事なので、当たり前すぎて気がつかないんですが、
そこのあたりから難しくなって、うまく飲み込めなかったりとか、窒息したりしてしまうのです。

Q.「食べても大丈夫なものか?」というところからなのですね!

そうなんです。 
お子さんだと、口に中に入れるじゃないですか? 
いろいろな物を口に入れて、「食べられるのかな?おいしいのかな?」と確かめるんですね。
 「リハビリテーション」じゃなくて、機能を獲得していくところを「ハビリテーション」といいます。 
リハビリは、ハビリテーションに「re」が付いてリハビリテーション。 
つまり、機能を再獲得していくということですね。 
リハビリのほうが世の中的に認知されていますね。 



 Q.なるほど!!摂食嚥下って、そもそもお年寄りのことだけじゃないんですね!勉強になりました。

目で見た時から「食べられるのかな?おいしいのかな?」と認識して判断する・・
子供の食育以前から関わってくるんですね。 発達に合わせてどういうものを食べたらいいかとか、
障害児の方の食材の見極めも摂食嚥下の専門医としての大事な仕事です。

Q.例えば、1歳児のお父さんお母さんにアドバイスはありますか?

「年齢」じゃなくて、「その子の成長に合わせて」食べていただく事が大事なんです。 
例えば、前歯が生えてきたとか、奥歯がしっかりしてくるとか、
口の中の形態やその子の食事に関する発達の状況に合わせてあげるといいと思います。 
年齢で「1歳だからコレ!」にすると、うまくいかない状況があります。
口の中と、体も含めてその子の成長に合わせてあげてください。
 
例えば、お子さんだと食べ物を手で掴んで遊んだり、
「ペッ」ってやっちゃうことってありますよね? 
自分の手で触ったり、口の中に入れてみたりして「これは食べられそう」など判断をしていくんですね。 
そういうのは、遊びなんですけれど、大事なんですよ。  
においを嗅いだり、歯ぐきでつぶしてみたり、味をみてみたりして、
これは食べられる?食べられない?どんな感じで食べたら食べやすいのか?というのが判ってくるのですね。 
発達の大事な道のりです。 若い人でもあります・・・たとえば脳梗塞とか。 
脳動脈の奇形とか、40歳くらいで脳梗塞発症することもあります。 
食べこぼをしたり、むせてしまうなど摂食嚥下の状態に合わせて診ることもあります。

 Q.摂食嚥下は、お年寄りだけの問題じゃないんですね。そもそも摂食嚥下の道に進もうと思ったキッカケは?

「大学院どこ行こうかな?」という時期に「摂食嚥下」という学問に出会いました。 
いろいろな先生に話を聞いた時に、「他の講座に行くと他に興味が出るから、
摂食嚥下をやりたいんだったら早くからやったほうがいいよ」と。

摂食嚥下は、他の歯科の専門分野とは全く違うジャンルなんです。 
例えば、今までの歯科診療・・・虫歯なら虫歯を削って、薬を詰めて、ハイ元通り!という感じだったんですけれど、
リハビリってそうはいかないんですね。 
同じ事をやっても「うまくいかない」とか、「やっぱり食べられない」という方もいらっしゃるんですよ。 
その人とその周囲の人の関わりも含め「これをやると絶対うまくいく!」というのはないんです。
難しいところでもありますが、うまくいった時にはすごく達成感があります。 
周りの環境もかなり重要なので、周りの人にも無理のないスケジュールにしないといけない、ご家族の協力が不可欠です。 
介護現場では食事は難しいという判断だけれど、ご家族はすごく(口からの食事を)望まれている場合など、
クッションとしての役割が出来ます。 
「その人に合わせた食べ方」を指導させていただいています。 

胃ろう(口から食事が出来ない場合、直接胃に栄養を入れる方法)になったからといって口から食べてはいけない訳ではありません。 
その人の残された機能を使って味を嗜んで(たしなんで)欲しいです。 
例えば、梅干を叩いてつぶした物なら食べられるかもしれないし、ゼリーにしたら食べられるかもしれないし、
梅味のペーストがあったり、いろいろな方法があります。 
我々も、食べ物が気管に入るとむせますよね。 
食べる以上は、むせるリスクをゼロには出来ない、
いかに低くするか?もしくは分かった上で食べていただくか、という認識をする事が大事です。 



 Q.「生きるって、口から食べることなんだ」と、身内の介護から学びました。

さっきの胃ろうの話なんですけれどね。 
知り合いなどが来ていても、食事の時になると一人暗い部屋で過ごす、、、など。 
でも「プリン1個なら大丈夫」となったら、同じテーブルを囲めるのです。 
その方はプリンを食べて、他の人は食事を摂ることが出来るのです。 
全部が全部そういう訳にはいかないのですが・・。 
治療は「完全オーダーメイド」ですね。

Q.先生みたいなドクター、ちょっとずつ増えているのですか?

はい、ちょっとずつですが増えています。 
摂食嚥下は、今でこそ歯科医師の国家試験に出るようになりましたが、昔は大学の授業でもなかったんです。 
インプラントが得意な先生がいるように、摂食嚥下が得意な先生もいます。 
医科でも耳鼻科の先生とか、言語聴覚士さんがいらっしゃって、歯科だけでなく色々な科の先生が力を合わせて、患者さんを診ます。

Q.摂食嚥下の治療は、医科(お医者さん)に係わることが多いジャンルではないですか?

そうですね、医科のドクターとご家族の間に入るシチュエーションは多いですね。 
医科から依頼をもらうこともありますし、
歯科から「経口(口から食べる)は難しいから胃ろうや経管栄養をご検討ください」と依頼を頂くこともあります。

Q.これから需要の増えるジャンルですね。

全ての歯科医師が出来る必要はなくて、「出来る人に繋げてもらう事」が大切です。 
お口の中をしっかりキレイにすることで肺炎になりにくくなるというデータがあります。
 歯科衛生士が清掃することが、肺炎予防になるのです。 
歯周病菌や、自分の胃液が逆流してきて肺に入って肺炎になる人もいます。

Q.にじいろ歯科クリニックでは、どんなアプローチになりますか?

在宅や、施設、訪問歯科診療がメインになります。 
医院にスロープがあるので、連れてきていただければ拝見することも出来ます。 



Q. 保険はきくんですか?

はい、摂食嚥下の治療自体は、医療保険で出来ます。 
訪問歯科診療ならば介護保険も利用できます。

Q.お子さんの為にお母さんたちにレクチャーも今後ありえますか?

障害をお持ちのお子さんには、どういうふうにアプローチしてらいいか一緒に考えていきたいと思います。

Q.今後の展望は?

専門分野は摂食嚥下なので、悩んでいるところを一緒に解決していけたらと思っています。 
上手に食べられるようになる方もいますが、そうでない方もいます。 
どちらのケースの場合でも、お口のメンテナンスはとても大切なので、
継続的に寄り添って診ていきたいです。 
お子さんの場合は、成長とともに食べられるようになります。 
心配なこと、困っていること、悩んでいること、ぜひお聞かせくださいね。 



 インタビュー:2019/04/08